「……ん。駿斗君、もう止めない?誰か来ちゃうかも……」

「大丈夫だよ。あと少しだけ。」


授業が終わった放課後。
今日も私達はいつもの屋上扉の前で秘密の試食会をしている。

……と言っても、私達が付き合っていることは周囲に公言してしまったので隠す必要はもうないけど、でもこの場所はやっぱり誰にも知られたくなくて。

今でもSHRが終わったら、こうしてこっそり二人で教室を抜け出して、定位置へと向かう。

そして、これまでと大きく変わったこと。
それは、試食会をする前に、こうして駿斗君とキスを交わすようになったこと。

別にそうしようと決めたわけではないけど、この場所に着いた途端、一日の欲求をここで爆発させるかのように、駿斗君は私を抱き締めてくる。

勿論、甘やかされることを快く受け入れた私は拒む理由なんてなく、むしろこれ程までに愛されていることが今でも信じられないくらい嬉しくて。

だから、初めは戸惑ったけど、段々と慣れ始めてきた私は、これからは自分も積極的に彼を求めていかなければと。

人生初の彼氏が出来たことにより、色々調べた知識を信じて行動に移そうと思ってはいるのだけど……。


今日も変わらず彼の甘さに酔いしれていると、ふとその隙を狙ったように、唇の隙間から熱い舌が無理矢理侵入してくる。

「ふあ、す、ストップ!」

危うく自分の舌を絡め取られそうになる手前。
私は即座に顔を離し、制するように彼の唇に人差し指を当てた。

「……ダメ?」

それを心底残念がるような、物悲しい目で見つめられてしまい、私はこの子犬顔にめっぽう弱い。

「そんな豆太みたいな顔してもダメです!」

けど、ここは心を鬼にして振り切り、私はバッサリと彼の要求を切り落とした。


本当に、私が積極的になろうとしても駿斗君のレベルには到底追いつくことが出来ず、こうして翻弄されるばかり。

この大人顔負けな彼の色気ある行為に、もしや女性経験豊富なのではと疑ってしまうけど、真相を聞く勇気はないので、過去の事は触れないようにしている。

というか、付き合うまでは全く気付かなかったけど、一見穏やかそうな駿斗君は実は野心家で、少し強引なところがあって。普段とのイメージが180度変わってしまった。

それに……。

「駿斗君って結構貪欲だよね」

自分で言うのもなんだけど、付き合い始めて思ったことは、私以上に彼の愛の方が重いような気がしなくもない。

束縛まではないけど、割と独占欲強めなような……。
この前も、委員会の仕事を他クラスの男子とずっと一緒にしてたら少し不機嫌そうだったし。