「心ちゃんおはよう。最近ずっと晴天続きで気持ちいいわねー」
「本当ですね。そういえば豆太の毛増えました?何だか段々と冬仕様になってきましたね」
今日もくるっと丸まった可愛い尻尾を振り回しながら、私の足に両手をついて喜びを全身で表現する豆太。
その破壊力抜群の愛くるしさに、これまたいつものようにやられた私は、モフモフ感が増した毛並みに本日も犬吸いをして活力を吸い取っていく。
「そういえば、心ちゃん最近駿斗と仲良くしてるの?」
すると、何気なく聞かれた美代さんの唐突な質問に、私の吸引力がぴたりと停止する。
「あ、はい。よく話すようになったのと、連絡先も交換したんですよ」
何故急に駿斗君の話題が挙がったのか不思議に思ったけど、別に隠すことでもないので、私は豆太から顔を離し、満面の笑みで彼との関係をオープンにした。
「ところで、駿斗って学校ではどうなの?あの子昔からずっとお菓子作りの事しか頭にないけど、学校では上手くやっているのかしら。特に女の子の事情とか」
「へっ?……あ。それって彼女がいるかどうかってことですか?」
まさかこの場でぶっちゃけた話をされるとは思ってもいなかったので、果たして私なんかが教えていいものか一瞬返答に迷う。
けど、そうは言っても親交は深まったけど、彼の恋愛事情まで知っているわけではないので、とりあえず自分がこれまで見てきた状況を伝えることにした。
「えと、駿斗君に彼女がいるのか分かりませんが学校では超モテますよ。あのルックスでしかもお菓子まで作れますし。それに優しいし、紳士的だし、努力家だし、頭も良いし、兎に角あんな完璧な男子はなかなかいないと思います!」
とりあえず、美代さんが駿斗君のことで何か不安に思うことがあるのなら、それを少しでも払拭してあげようと。
そう意気込んで彼の長所を羅列してみたら、何やら勢いが止まらなくなってしまった。
「そっか。まさか心ちゃんにそこまで思われていたなんてね。……ねえ、心ちゃんは駿斗のこと、どう?」
「……へっ?」
すると、急な方向転換に一瞬思考が付いていけずその場で固まると、途端に顔面全体が熱を帯び始めていく。
「え、えっと……素敵だと思います。私は夢に必死な彼を尊敬してますし、羨ましいなって思いますよ」
本当は最近更に距離間が近くなった駿斗君に、それ以上の感情を抱き始めている自覚はある。
けど、流石にその話は美代さんの前では出来ないので、一先ず当たり障りのない回答をしてみた。
「心ちゃんにそう言われるときっと駿斗も喜ぶと思うわ。だから、これからも応援してあげてね」
そして、これまた無難な美代さんの返答がきたけど、何やら妙な圧を感じるのは気のせいだろうか……。