熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~

「違うわよ。あなたが高校生になって理系に進むって言いだした頃? 家元は継がないっていうから、じゃあ成輔さんと婚約するのは百合ねって本人に話したことがあるもの」

初耳だ。母と百合の間でそんな話があったなんて。
確かに私は高校生の頃、そういった話をしたし、両親は風尾家の跡継ぎと院田流の家元が結婚するものだと考えていた。私だって、そう思っていたくらいだ。
百合本人に話がいっていないなんて、どうして楽観視していたのだろう。
母はふふふと笑った。

「百合はまんざらでもない顔をしていたわよ。だから、百合だって当時は成輔さんを間違いなく好きだったのよ」
百合は成輔が好きだった?

嘘でしょう。
そんな素振り見せたことがない。

そこまで考え、私は先週の百合の表情を思い出した。
成輔を見つめる憧れを含んだ一途な眼差し。そうだ、あんな百合の表情なら私は過去何度も見ている。幼い頃や学生時代。あれは百合が成輔を兄のように慕っているからだと思っていたけれど、もしかして違ったのだろうか。

百合は、成輔が好きだった。
もしかしたら今も……?