熱情滾るCEOから一途に執愛されています～大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました～

一方私はぼそりと呟く。

「世間が百合を見つけてしまう……」

可愛くて才能あふれる百合がメディアに取り上げられたら、きっとあっと言う間に人気者になってしまう。百合個人名義ではSNSはやっていないけれど、院田流名義のSNSはフォロワー急増。テレビや動画配信サービスのチャンネルなどにも呼ばれてしまうかもしれない。

私が脳内でシスコンを爆発させていると、母は浮かれた調子で言った。

「あとで雑誌の名前とか、発売時期とか送るわね。あなたも百合の活躍を見習ってほしいものだわ」

何を見習えと言うのか。それは院田流に戻ってこいという意味なのだろうなと感じ、私はもそもそとタルトを口に運ぶ。母も無邪気にタルトを頬張って、声をあげた。

「あら、美味しい。これ、確か銀座にできたなんとかってシェフの店のなんか美味しいスイーツでしょ。行列になってるのテレビで見たわ」
「お母さん、情報がわやわや」

ツッコミつつ、私もよくわかっていないのでそれ以上は言わない。
確かにとても美味しい。成輔が並んで買ってきたわけじゃないだろうし、秘書さんが並んだのか、それともシェフと知り合いで融通してもらったとか……。