「でさ、院田、今度食事とかどうかな」

だしぬけに誘われて、私はうどんを噴き出しそうになった。もちろん、そんな動揺は見せず、落ち着いて飲み込んだけれど。

「文脈がわからない。なぜ、いきなり食事なの?」
「まるいち、同期と親睦を深めたい」
「他のメンバーの都合も聞かないと」
「みんなすぐに集まれる距離にいないだろ?」

今谷は無邪気に指を一本立てて見せる。それから、中指もあわせて立て二本にした。

「まるに、家庭の事情。今度、兄貴が彼女を連れてくるらしいんだけど、どんなものを用意したらいいかうちの親が悩んじゃってさ」
「え、私に聞いても参考にならないから」
「プレゼントも渡したいんだってよ。だから、買うの付き合ってほしいんだけど、どう?」
「余計、参考にならないし」

私が欲しがるもの、興味あるものを、一般的な女性がほしがるとは思えない。そして、一般的な女性が好きであろう服飾雑貨やコスメを私はほとんど知らないのだ。

「じゃあさ、華道の家元なんだろ? 院田の家って。院田自身も華道家なの?」
「私は違うけど、一応稽古はつけられた」
「じゃあさ、家に飾る花や花束を見立ててよ。ぱぱっとできるなら、生けてもらっちゃったり? 女性って花が好きだし、喜ぶよな」