熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~

昨日のキスだって、動揺で逃げ出したくらいだ。それ以上のことなんて想像もできない。ドラマや映画で見るぼんやりした世界しか知識がないくらいなのに。

(やっぱり多少は好意がないと厳しいんじゃないかな)

世の中のお見合いカップルはこれらを乗り越えて結婚しているのかと思うと改めて感心する。いや、私がなまじっか成輔と知り合いというせいで混乱が生まれているのは間違いない。
そうこうしているうちに電車が最寄り駅に到着した。改札を抜けたところで、少し前を歩く見慣れた後ろ姿を見つけた。

「百合」

髪を結い上げ、訪問着姿の妹がくるりと振り返る。その仕草ひとつがもう綺麗だ。

「お姉ちゃん」

百合は名前通り百合の花のようなイメージ。清楚なのに華やか。賑やかで若者が多い地元の街なのに、百合のいる場所だけ少し空気が違って見える。

「お仕事、お疲れ様。夕飯は八宝菜だって、お母さんが言ってたよ」
「八宝菜好き。百合はお父さんのお使い?」
「そう、花器の進捗をうかがいに岩水(がんすい)先生のところへ」

花を活ける花器は様々なものを使うが、岩水先生は祖父の代から懇意にしている陶芸家の先生だ。気難しい老人で、気に入った人としか話さない。現在、院田流で一番好かれているのが百合なのだ。