「院田、おはよう」
会社の門のところで、同期の今谷(いまたに)と会った。彼は研究職ではなく営業職として入社している。大学時代は野球部だったそうで、見るからにスポーツマン然とした体格と話し方をする。私が院卒なので、ふたつ年下だ。
「おはよう」
「さっき、車で下ろしてもらってたよな」
だから会社の近くは嫌なのだ。私は無表情のまま「家族」と答える。
今谷は疑うこともなくへえと頷く。
「院田の家って、華道の家元なんだろ。すごいお嬢様じゃん。使用人とかいるの? お抱え運転手とか」
「いや、普通。たまにお手伝いさんはくるけど、運転手はいない。華道関連はお弟子さんが手伝ってくれるかな。家は平屋の和風建築で、お稽古で使うから和室や庭園があるってくらい」
「お嬢様じゃん」
言われてみれば、一般家庭とは違うかもしれない。私はあまり細かく考えてこなかったけれど。
「まあ、お嬢様っぽくない院田が親しみやすくていいんだけどな」
「それはどうも」
そう答えて、会社のエントランスに入っていった。お嬢様っぽくないのは自覚があるし、それでいいのだけれど、私ってあまり親しみやすくもないよなあなどと考えながら。
会社の門のところで、同期の今谷(いまたに)と会った。彼は研究職ではなく営業職として入社している。大学時代は野球部だったそうで、見るからにスポーツマン然とした体格と話し方をする。私が院卒なので、ふたつ年下だ。
「おはよう」
「さっき、車で下ろしてもらってたよな」
だから会社の近くは嫌なのだ。私は無表情のまま「家族」と答える。
今谷は疑うこともなくへえと頷く。
「院田の家って、華道の家元なんだろ。すごいお嬢様じゃん。使用人とかいるの? お抱え運転手とか」
「いや、普通。たまにお手伝いさんはくるけど、運転手はいない。華道関連はお弟子さんが手伝ってくれるかな。家は平屋の和風建築で、お稽古で使うから和室や庭園があるってくらい」
「お嬢様じゃん」
言われてみれば、一般家庭とは違うかもしれない。私はあまり細かく考えてこなかったけれど。
「まあ、お嬢様っぽくない院田が親しみやすくていいんだけどな」
「それはどうも」
そう答えて、会社のエントランスに入っていった。お嬢様っぽくないのは自覚があるし、それでいいのだけれど、私ってあまり親しみやすくもないよなあなどと考えながら。



