成輔に対する気持ちはなんとも複雑だ。

幼い頃は純粋に好きだった。成輔は格好いいお兄ちゃんだったし、私と百合を妹のように可愛がってくれた。
だけど、成輔は私とは生きる世界が違うのだ。彼は輝く場所が似合うし、大勢の人を従える役職につく人。私は違う。家元にはなりたくないし、そんな才能もない。好きなことをじっくりひとりで見つめていきたいだけ。

生き方が違う。キャラクターが違う。
私と成輔は、全然違う。

小学生時代、成輔への憧れの気持ちを捨て、壁を立てた私。それからも成輔は変わらず私に接してきた。それがわずらわしくて、余計背中を向けた。成輔は気にせず、明るく私に近づいてきた。高校になって、自分の道が見えてくれば余計に彼を遠ざけた。
軽々しく、「可愛い」とか「会いたかった」などと言ってくる成輔。まともに取り合わなかったのは、これらすべてが成輔のお遊びで、ただの親愛の証だと思っていたから。

今更本気で好きだなどと言われても困るのだ。