やがて、百合がひっかかるような寝息をたてはじめ、ようやく居間に戻る。
「熱、下がってないみたいよ。かなり苦しそう。食事どころじゃないよ、あれじゃ」
「解熱剤がきかないのよ。ずっと40度近くあるから、私も心配で」
母は私にお茶を出してくれながら、ふうと息をつく。
「三日前、大雨のなかずぶぬれで帰ってきたのよ。傘を忘れたなんて言っていたけど、途中で買えばいいだけでしょう。何かあったのかしら。そういうことを何も話してくれないから」
おそらくその日に百合は失恋したのだ。
ふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。百合の片想いの相手に対してだ。
師匠に怒られて諦めてしまえる程度の感情しか百合に持っていなかったのか。それなら、下手に気を持たせ続けたここ数年は残酷すぎる。
百合が高熱を出しているのは、本人が失恋で自棄になった結果かもしれない。
それでも、百合を追い込んだ岩千先生にはどうしてもひと言物申したい。
「お母さん、私また近いうちに来るわ」
すっくと立ちあがった私に母は「あなたは家でのんびりお産を待ってちょうだい」とこぼしていた。
「熱、下がってないみたいよ。かなり苦しそう。食事どころじゃないよ、あれじゃ」
「解熱剤がきかないのよ。ずっと40度近くあるから、私も心配で」
母は私にお茶を出してくれながら、ふうと息をつく。
「三日前、大雨のなかずぶぬれで帰ってきたのよ。傘を忘れたなんて言っていたけど、途中で買えばいいだけでしょう。何かあったのかしら。そういうことを何も話してくれないから」
おそらくその日に百合は失恋したのだ。
ふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。百合の片想いの相手に対してだ。
師匠に怒られて諦めてしまえる程度の感情しか百合に持っていなかったのか。それなら、下手に気を持たせ続けたここ数年は残酷すぎる。
百合が高熱を出しているのは、本人が失恋で自棄になった結果かもしれない。
それでも、百合を追い込んだ岩千先生にはどうしてもひと言物申したい。
「お母さん、私また近いうちに来るわ」
すっくと立ちあがった私に母は「あなたは家でのんびりお産を待ってちょうだい」とこぼしていた。



