家に帰り着くと、簡単な昼食をとり、作れる範囲で夕食の準備をした。
最近は夕方になるとお腹が張りやすくて疲れてしまう。休み休みやると夕食の仕上がりもゆっくりになるので、計画的に進めている。
以前よりマシになったとはいえ、いまだに手際よく料理できるほうじゃない。

炊飯器をセットし、スープの具材を切り、肉に味付けだけしてソファに座った。
お腹の中では赤ちゃんがぐるぐる動いでいる。出産が近づくと胎動が減ると聞くけれど、これだけ動いているならまだまだなのかもしれない。予定日まで二週間と少し。陣痛はいつになるだろう。

赤ちゃんは男の子だそうだ。百合と姉妹で育ったから、自分が男の子を育てられるかまったくの未知。だけど、成輔によく似た男の子だったらいいなと思う。
すこぶる顔がよくて、頭もよくて……想像すると楽しみだ。ちょっと危険なくらいの執着愛は似なくていいけれど。

午前の散歩が長かったせいか、窓から入ってくる風がちょうどよかったせいか、私は眠りこんでいたようだ。

「葵」

名前を呼ぶ声で目覚めた。すぐ目の前に成輔の顔がある。

「あれ、成輔……」

リビングには灯りがともり、外は薄闇。壁時計は18時を指している。
三時間ほどソファで爆睡していたみたい。

「わ~、ごめん、寝ちゃってた。ごはんの準備できてないや。お米は炊けてると思うけど」

慌てて身体を起こし、成輔の表情が硬いことに気づいた。