「『ぜひ、お嫁さんと一緒にオーストラリアに遊びに来て』というようなことを言われたよ。それから、世間話風に現地の夫と経営しているカフェの苦境を聞かされた」
ハッとした。結婚式で小沢康太が言っていたことと重なる。先ほどもケチ臭いなどと言っていたけれど。
「『あなたは会社を経営しているんでしょう。風尾グループとは関係なく息子として、私と彼の出資者にならない?』だってさ。我が母親ながら、なんとも浅はかで笑ってしまったよ」
そう言う成輔の横顔は寂しそうだった。
「俺は親父と違って冷たいからね。はっきり断った。残念そうにしていたけど、すぐに康太にチクったんだろう。まだ日本にいるならもう少しゴネてこいってさ」
「そんな……」
「母は偉い大学教授の娘で、甘やかされていたせいか経済感覚がないんだよ。経営者として、そんな相手に出資できない。たとえ実母でもね」
成輔はまた少し黙った。ぼそりと付け加えるみたいな声が聞こえた。
「こんなことでいまだにがっかりする自分に驚くよ」
私は拳をぎゅっと握った。私が悔しかった。成輔のお母さんだろうが、そんなの関係ない。成輔を傷つけた人間を今すぐ怒鳴りつけたかった。
だけど、私にそんなことはできない。成輔のお母さんはここにいないし、成輔は喜ばないだろうから。
ハッとした。結婚式で小沢康太が言っていたことと重なる。先ほどもケチ臭いなどと言っていたけれど。
「『あなたは会社を経営しているんでしょう。風尾グループとは関係なく息子として、私と彼の出資者にならない?』だってさ。我が母親ながら、なんとも浅はかで笑ってしまったよ」
そう言う成輔の横顔は寂しそうだった。
「俺は親父と違って冷たいからね。はっきり断った。残念そうにしていたけど、すぐに康太にチクったんだろう。まだ日本にいるならもう少しゴネてこいってさ」
「そんな……」
「母は偉い大学教授の娘で、甘やかされていたせいか経済感覚がないんだよ。経営者として、そんな相手に出資できない。たとえ実母でもね」
成輔はまた少し黙った。ぼそりと付け加えるみたいな声が聞こえた。
「こんなことでいまだにがっかりする自分に驚くよ」
私は拳をぎゅっと握った。私が悔しかった。成輔のお母さんだろうが、そんなの関係ない。成輔を傷つけた人間を今すぐ怒鳴りつけたかった。
だけど、私にそんなことはできない。成輔のお母さんはここにいないし、成輔は喜ばないだろうから。



