「葵ちゃん、ようこそ。つわりがあるんだってね。休めるようにソファや布団を用意してあるから、体調が悪かったら言うんだよ」
「お義父さん、ありがとうございます」

風尾社長……お義父さんはとても嬉しそうだ。初孫だものね。

リビングには大きな一人がけ用のソファが用意され、足をのばせるようにオットマンもある。隣室の和室には横になれるように客用布団が敷かれてあるそうだ。
なんだかものすごく気を遣わせてしまっている。そして、成輔の細々と気の付くところはお義父さん譲りなのだなと感じた。

「親父、一応言うけど、安定期に入るまでは周囲には言っちゃ駄目だからね」
「わかってるよ!」
「男の子か女の子かわからないうちにベビー用品を買うのも駄目」
「それもわかってる。でも、いつ頃にわかるかなあ」

成輔とお義父さんの会話がとても可愛いので私は笑いをかみ殺し、変なにやにや顔になってしまう。
ふたりがどれほど赤ちゃんを楽しみにしているか伝わってくる。性別がわかったら、すぐに教えてあげないと。

お祝いの食事は三人でなごやかに進んだ。ハウスキーパーさんが作ってくれたマッシュポテトやトマトサラダはいくらか食べられたし、椅子に座っているのが苦しいときは遠慮なくソファを使わせてもらった。

しかし、一時間もすると強い疲労感で座っているのが苦しくなってきた。
妊娠してから、とにかく疲労を感じやすい。もともとすごく食べる私が、あまり食事がとれていないのも理由かもしれない。