「そうだ。明日の夜の会食もうちの実家にしたから。外はきついだろうし」

明日の夜は妊娠のお祝いに成輔のお父さん・風尾社長と食事会なのだ。妊娠のことは、風尾社長とうちの両親と百合しか知らない。
確かに外食は料理店の匂いだけで苦しいし、ずっと椅子に座っているのも苦しい。成輔の実家なら気楽だ。

「通いのハウスキーパーさんは料理がすごく上手だからさ。葵は無理して食べなくていいけど、口当たりの好いものをいくつか用意してもらうよ」
「気にしないでいいよ。またトマト食べてるから」
「トマトは用意をお願いしてる。妻が好きなんですって」
「ふふ、ありがたいなあ」

つわりで体調が安定しないと、不安な気持ちになりやすいけれど、私のペースで付き合って乗り越えていこう。隣には成輔がいてくれるんだから。


翌日の仕事の後、成輔とともに風尾家へ向かった。
成輔の実家は、我が家からもさほど遠くない現代建築の豪邸だ。私と同居するまでは成輔と風尾社長がふたり暮らしをしていた。
料理や家事は成輔や通いのハウスキーパーさんが担当していたそうだ。