「好きにしていいよ。成輔を追い詰めたのは結果的に私だし」
「本当に抱くよ。いいの?」
「いいよ。私が今谷と不倫するかもって疑ってくるくらいなんだし、処女あげとくよ。疑いは晴れないだろうけど、少しは気が晴れるんじゃない」

自暴自棄の言葉だった。それでも、成輔に今差し出せるものがこれしかなかった。
すると成輔は私の上からどいた。激情は去っているようだったが、代わりに強い悲嘆の色が彼の顔にはあった。それを隠したいのかうつむきがちに立ち上がり、部屋を出ていった。

「成輔……」

私は間違ったのだろうか。
どこからどこまで間違ったのだろうか。
成輔を傷つける結果にしかならないなら、一緒に住むんじゃなかった。中途半端なまま、結婚なんて考えたらいけなかった。

その後、同じマンションで暮らしながら、私たちはお互いを避けた。顔を合わせないよう、ほとんどの時間を自室で過ごした。結果、成輔と話す機会は訪れなかった。

翌週、私は二ヶ月の出向のため東京を去ったのだった。