ハッと私は顔をあげた。
目の前にいるやり手経営者を利用すべきではないか?
「ねえ、自由恋愛の時代って言ったのは成輔だよね。私と成輔で、院田家と風尾家の婚姻っていう計画自体をなくしてしまわない?」
親同士の約束なら、子どもが全員拒否することで終わりにできないだろうか。成輔なら、きっと上手に双方の親を説き伏せてくれる。
私はまだ結婚したくない。希望の仕事についた。働きたいし、研究もしたい。
自分のことで手一杯の私が誰かの妻になんてなる余裕はない。子どもだって望まれても困る。
成輔は明るく笑い声をあげた。
「それは駄目だよ。だって、俺は葵ちゃんが好きだからね。葵ちゃんが妻になってくれるためなら、なんでもするよ」
「なんでそうなるかな……。成輔、モテるでしょ。彼女はいないの?」
「ずっと葵ちゃんひと筋」
「嘘つき」
私はぶすっと呟く。
成輔は昔から私に対して常にこういう態度だが、絶対裏があるに違いない。
私は決して美人ではない。
真っ黒な髪、平均より少し高い身長、眼鏡をかけた地味系理系女子。
妹のような美貌も華道の才能もない。そんな私に好意を示してくるなんておかしい。
家元が私じゃないのは本日確定。この期に及んでまだ私を妻に望んでいるのはどうしたわけ? 成輔がなぜ私を選び、妻にしたいのかがさっぱりわからない。
目の前にいるやり手経営者を利用すべきではないか?
「ねえ、自由恋愛の時代って言ったのは成輔だよね。私と成輔で、院田家と風尾家の婚姻っていう計画自体をなくしてしまわない?」
親同士の約束なら、子どもが全員拒否することで終わりにできないだろうか。成輔なら、きっと上手に双方の親を説き伏せてくれる。
私はまだ結婚したくない。希望の仕事についた。働きたいし、研究もしたい。
自分のことで手一杯の私が誰かの妻になんてなる余裕はない。子どもだって望まれても困る。
成輔は明るく笑い声をあげた。
「それは駄目だよ。だって、俺は葵ちゃんが好きだからね。葵ちゃんが妻になってくれるためなら、なんでもするよ」
「なんでそうなるかな……。成輔、モテるでしょ。彼女はいないの?」
「ずっと葵ちゃんひと筋」
「嘘つき」
私はぶすっと呟く。
成輔は昔から私に対して常にこういう態度だが、絶対裏があるに違いない。
私は決して美人ではない。
真っ黒な髪、平均より少し高い身長、眼鏡をかけた地味系理系女子。
妹のような美貌も華道の才能もない。そんな私に好意を示してくるなんておかしい。
家元が私じゃないのは本日確定。この期に及んでまだ私を妻に望んでいるのはどうしたわけ? 成輔がなぜ私を選び、妻にしたいのかがさっぱりわからない。



