熱情滾るCEOから一途に執愛されています～大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました～

百合、私の可愛い妹。
才能があって、美しくて、性格がよくて、天使みたい。
成輔の隣にいたあなたはなんて輝いていただろう。なんてお似合いだっただろう。
……こんなこと、考えたくないのに。

「百合ちゃんの雑誌、出たんだね」

ぼうっと同じページに視線を落としていた私に、成輔が雑誌を覗き込んで言った。

「百合ちゃん、写真映りいいよね。綺麗だ」

素直に百合を褒め、成輔はエプロンを腰に巻き始めている。今日は午前中だけ会社に顔を出し、さきほど帰ってきたところ。これから夕飯の下ごしらえに入るそうだ。

「食事の仕度の前に、記事も読んでよ」

手渡すと、成輔は真剣な眼差しで雑誌のページを繰る。
読み終わって、私の手に雑誌を置いた。

「百合ちゃんは自分の考えに一本芯がある。院田流の次期家元に相応しいインタビューだったと思う」
「そうだよね」

頷きながら、胸がもやっとした。なぜもやもやするのかわからない。
そのもやもやはここ最近、ずっと続いているものだけれど、今日はいっそう闇が濃い気がする。

「彼女の生け花、俺は昔から好きだよ」

成輔が静かな口調で言う。

「静と動が同居してる。静謐なのに豪放磊落。ひとりの人間の二面性なんじゃない。すべて同じ場所にあるっていう感じ。……語彙が乏しいな、俺」
「いや、わかる……」
「彼女の激しさが伝わってくる。訴えたいものがあるって感じかな」