熱情滾るCEOから一途に執愛されています～大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました～

百合が取材を受けたという雑誌は、ひと月もかからず私の手元に届いた。
驚いたのは、雑誌の種類だ。意識が高い若者や経営者が読むようなビジネス雑誌だった。
思っていたのと違う。もっとライトな女性誌か何かの特集だと思っていた。
百合は院田流の華道家として、未来の家元として、こういったところで取り上げられる活躍をしているのだ。
先日パーティーで見かけた百合も、もういっぱしの華道家だったものなと考える。

雑誌に掲載されたロングインタビューは見事なものだった。過去と現在の華道界全体を通し、院田流の位置づけや独自の考え方を述べ、伝統を大切にしながら新進の風も取り込んでいくという点を作品を通して語っていた。
おとなしいけれど、芯が強い百合らしい。
そしてピックアップされている百合の作品はやはり圧倒的な才能を感じさせた。
百合の愛らしい容姿だけでなく、読者はこの作品のパワーをダイレクトに受け取るだろう。

「私じゃ、こうはいかないな」

雑誌を眺めて、ぼそりと呟いた。

百合を誇らしく思う。百合に嫉妬はしていない。
だけど、百合の才能が私にあったらどうだっただろうとは思う。
院田流が嫌いだったわけじゃない。華道が嫌いだったわけじゃない。しかし、必死になって取り組んでも百合が見えている世界は私には見えなかった。
それだけが少し歯がゆい。