熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~

ふと気づいた。
その横にいる白の振袖姿の女性。

「百合……」

百合だった。今日のパーティーは風尾グループも院田流もお世話になっている食品会社会長の催した会。百合がいても不思議ではない。
しかし、成輔と寄り添うように立ち、周囲と談笑する姿はまるで……。

「風尾グループの御曹司、相変わらず美形よね」

横を通るご婦人ふたり組の声に思わずびくりと肩が揺れる。ほら、成輔、男前すぎて噂になってるよと思いながら、心臓の嫌なドキドキが止まらない。

「お隣にいるのって、院田流華道のお嬢さんでしょう」
「次の家元はあの方らしいわよ。風尾グループとは昵懇だし、もう婚約していたりしてね」
「美男美女でお似合いだものねえ」

そんな話をしながら退室していくご婦人ふたりを見送り、私は再び成輔と百合を見つめる。

「確かにお似合いだわ」

まるで恋人同士みたい。愛らしい百合の花のような次期家元、美形の青年実業家。
誰が見ても押しも押されぬ美男美女のパーフェクトカップル。
私には出る幕なんかない。きっと、成輔が私と結婚すると公にすれば、私たちを知っている人間は皆言うだろう。花嫁は妹のほうじゃないの?って。

「帰ろう」

私は手にした紙袋の持ち手を握りしめる。この中のスマートウォッチがなくても、今日一日くらい平気でしょう。
ここで今、成輔に会いたくなかった。
妙なショックを受けている自分も嫌だった。