熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~

「毒牙って、ひどい言い方だなぁ。俺、そんなに悪い男じゃないと思うけど」

成輔は余裕たっぷりだ。どこまでも人を食ったような態度だから、嫌なんだけれど。

「でもまあ、そうか。院田先生は、風尾家との縁を大事にしているし、そのための婚姻という側面は無いとは言えない。きみが断ったら、俺との縁談は百合ちゃんに行くかもね」

ほんのついさっきまで、私は百合と成輔がいずれ結婚するものだと思っていた。しかし、それは院田家と風尾家で決められた大事な約束だと考えていたからであって、案外軽い親同士の約束ということなら話は別だ。
可愛い妹を胡散臭い男に渡す必要はない。

「両親を説得するから、大丈夫」
「院田流の未来を考えたら、百合ちゃんは俺との結婚に頷いちゃうかもなあ。妹に俺を押し付けて、自分は自由に生きるなんて、葵ちゃんにできるの?」
「う……」

嫌な言い方をしてくる。成輔はさわやか好青年ではあるが、やり手の経営者であるのは間違いなく、理詰めでくると強い。
そうだ。いくら私より華道家として優れているからといって、家業を妹に押し付けてしまったのは私。さらに結婚相手まで……。