二人を降ろした後、翔は沙羅を乗せたままホテルとは違う方向へ車を走らせた。
 沙羅は二人と別れてホッとしたのか、助手席でウトウトしている。翔は、そんな沙羅を少し寝かせてあげたかった。事務所の駐車場に車の入れ替えのために行くだけだ。翔は音楽のボリュームを少しだけ下げて、静かに時間を費やした。
 A&Wは会社の駐車場として事務所のあるビルの地下に数台分借りている。翔は沙羅が隣で寝ているため、事務所にいる人間に駐車場まで鍵の受け渡しに来てもらう事にした。
 空いているスペースに車を停めて待っていると、めちゃくちゃ楽しそうにこちらに近づいてくる男がいる。よくよく見ると優也だった。
 翔はこの受け渡しの作業を、唯一の女性スタッフのユリアに頼んだはずなのに。何故、優也??
 優也は翔と目が合うとニヤニヤしながら軽く手を上げた。
 優也は翔より二歳年上で、このチームではリーダー格だ。リーダーといっても、天然で性格が優しいため愛されキャラだ。ということで、顧客にも人気が高かった。