放課後、学校を出ると見慣れた大きな黒い車が止まっていた。
「カヤ様お待ちしておりました」

車の隣で待機していた朝の紳士がそう言い、車のドアを開けてくれる。
「ねぇ、そういえばあなたなんて名前?」

走りだす車の中、あたしは前の席に座る紳士にそう声をかけた。
「わたくしですか? 申しおくれました平野家にお仕えしております、丸本と申します」
「丸本さん? じゃぁ丸本ジィジって呼んでもいい?」

「は、はぁ……ジィジですか」
「嫌?」
「い、いえ。光栄でございます」

「そっか、良かった。丸本ジィジっていい人だね。『ジィジ』って呼ばれることが光栄だなんて普通思わないもんね」
あたしはそう言い、フカフカの椅子にみを沈めた。

今日1日色々な事が起こりすぎてどっと疲れが出てきた気がする。
目を閉じ目見ると、すぐにでも夢の中へと引き込まれてしまいそうだ。
「丸本ジィジ」