汗をふきふきそう訊ねると、紳士は困ったように首を傾げた。
「おかしいですね。坊ちゃまたちから新しい付き人が決まったので迎えにいってほしいと頼まれてきたのですが……」
「坊ちゃまに……付き人……?」

なんとなく頭の中で点と線が繋がってきて、あたしは大量の汗をふく。
「まさか、その坊ちゃまって……」

「はい。【ツインズ】の晴様と圭様でございます」
丁寧にお辞儀をしてそう答える紳士。
やっぱりあいつらかぁぁぁ!!!
カーッと頭に血が上って行くのがわかる。

あの2人にお金があることは分かっているけれど、こんな卑怯な手を使うとは……。
「ちょっとカヤちゃん、【ツインズ】の付き人ってどういう事!?」
「松井さん【ツインズ】にあった事あるの!?」

「【ツインズ】の付き人って2人に見初められた女の子だけがなれるっていう噂の!?」
突然クラス中から黄色い声が湧きあがり、あたしの怒りの熱は急激に冷めて行った。

これはやばい……。
クラスメイト数十人という女子たちがあたしを取り囲もうとしている。
クッ……。

怒るのは後回しだ、ここは逃げなきゃいけない。
あたしは女の子の間を縫ってドアまで走ると「秋原高校まで案内お願い!」と、紳士に言った。
紳士はニッコリとほほ笑み「承知いたしました。松井カヤ様」と、言ったのだった。