ユズちゃんのパンチをまともに受けたあたしは、小鳥のさえずりで目を覚ました。
ここは……天国?
クラクラする頭でぼんやりとそんなことを考える。

なぜだか、どういうワケか、ごくごく普通の女子高生ユズちゃんの腕力はそこらへんの男どもを軽く上回る。
中肉中背で筋肉も目立つワケじゃないのに、人間1人を片手で持ち上げることがたやすいという超人的体質の持ち主なのだ。

そんなユズちゃんはキレたらあっという間に自我を失う傾向にある。
これまでも何度となく喧嘩をした相手を血祭りにし、病院送りにしている。
今まで一度も死者が出ていないのが不思議なくらいだ。

あたしは何度か瞬きをして、見慣れた自分の部屋にいるということが確認できるとホッと安堵のため息をもらした。
よかった。
どうにかまだ生きているみたいだ。

ゆっくりとベッドから身を起こすと、鼻が痛んだ。
まさか折れてないよね?
そう思い、恐る恐る鼻の頭に揺れる。