晴は真剣な表情になり、まだ少し湿っているあたしの前髪に触れた。
肌に触れていない晴の熱が、少しだけ伝わってくる。

それだけでドクドクと心臓はわめき散らし、鼻血を拭いて倒れてしまいそうになる。
きっと今キスなんてできないだろう。
自分の内に秘めていた感情に、あたし自身が気が付いてしまった途端、その壁はあまりにも分厚く、高くなってしまう。

「イジメられてもいいから、あたしも輝きたい」
あたしは夜空に輝いた花火を思い出していた。

あの時、あたしの感情はまだ不安定で1つに絞ることなんてできる状態じゃなかった。
でも、今は違う。
視線はずっと晴の靴を見ていて、チラチラと確認する程度しか晴を見れなくなってしまったけれど、これこそ答えだとわかったから。

そうしていると、晴の腕が伸びて来てあたしの背中に回った。
グッと抱き寄せられて呼吸が止まる。
甘い香水の香りが鼻をくすぐり、突然吹いて来た風も2人の間を引き裂けないほどの距離になる。
「俺にとっては、出会ったころからカヤは輝いてる……」

「くさいセリフ」
上の中でクスクスと笑うと、晴は怒ったように身を離した。
「黙れ」
そう言い、軽く顎を持ち上げられたあたしは2度目のキスをしたのだった。