結局、晴の手当てが中途半端にしかできないまま、次の試合は始ってしまった。
晴は時々足を止め、痛みに表情をゆがめている。
その光景に２階の客席から心配そうな声が飛び交い始めた。

相手チームはエース的存在の【ツインズ】の片割れが使い物にならない事をいいことに、圭ばかりをマークしている。
それが原因で、圭もなかなかシュートを決めることができない。

いつしか体育館の中はシンと静かになり、みんな集中して試合に見入っているのがわかった。
キュッキュッと床とシューズがこすれあう音、ダンダンとボールを床に内つける音だけが響く。

圭がようやく敵の隙間を見つけ、そこからボールを放った。
圭の手から離れたボールは吸い込まれるようにゴールへと入る。
それは３ポイントシュートと呼ばれる難易度の高いシュートで、一斉に黄色い歓声が湧きあがった。

でも……。
あたしの視線は圭を通り越し、圭を取り囲む敵を通り越し、時々見え隠れするだけの晴を追っていた。
晴の表情は苦しそうじゃないか？