晴に掃除を言いつけられたあたしは嫌々ながら廊下へ出た。
「雑巾雑巾……掃除道具ってどこだろ」
広いお屋敷の中をグルグルとさまよい歩いていると、丸本ジィジを見つけた。

「丸本ジィジ! 掃除道具どこ~?」
そう言いながら駆け寄ると、丸本じぃじは少し驚いたようにあたしを見た。
「今日はお掃除でございますか、カヤ様」
「そうなの。こんな素敵なお屋敷初めて来たんだけど、あたしは所詮【付き人】だからねぇ」
と、自虐的に言って苦笑する。

「そうでございますか。掃除道具はこちらでございます」
丸本ジィジはそう言い、廊下に立っている大きな振り子時計の下を開けた。
「へぇ! こんな所に入っているの!?」

「さようでございます。この時計は時計盤の部分だけが本物で、下は物入れになっております」
「すごい、オシャレ……」
これならお屋敷の静観も損なわないわけだ。
あたしはその中からモップを一本取り出した。

「ありがとう、丸本ジィジ!」
あたしはジィジに手を振り、張り切って掃除を始めた。
こんな雑用さっさと終わらせてハジメのところへ戻るんだ!

そして少しでも高級感を肌で感じて楽しんでやるんだ!
そう思い、あたしは鼻息を荒くしたのだった。