「俺も穂香を好きになった理由は恩からだし、俺はその恩をずっと返したかった。結果、穂香に返せたのならよかったって思ってるだけだから。だから俺にとってはそれ『だけ』だってことを履き違えないでほしい」
ぎゅうっと手を握られることにより澄人さんの想いが強く伝わってくる。
ーー私はこれからも澄人さんを想っていても良いんだということにとても心が救われた。
「私 、澄人さんと一緒にこれからもいたいです」
そう伝えると澄人さんは嬉しそうに「うん」と頷いた。
本当に夢を見ているみたいだ……
澄人さんは私の手を離し、「穂香、ありがとう」とお礼を伝えられ、ズボンのポケットに入れていたスマホを耳に当てどこかに電話をし始めた。
「ーーもしもし、父さん、俺だけど」
澄人さんが『父さん』と発したことから、澄人さんの電話の相手がお父さんだということが分かった。ゴクリと息を飲み澄人さんの言葉を聞く。
「俺さ大学を卒業してすぐにうちの会社に入ったけどさ、今こうして社長をできていることに感謝してるしこれからも俺は会社のために頑張るから。ちゃんと父さんにも感謝してるから。それと、そう遠くない未来の嫁さんつれて実家に顔出すからよろしく」
『そう遠くない未来の嫁さん』今、もしかしたら電話口で罵倒されているのかもしれないけれど、つい、口元が緩んで、嬉しさが顔に出てしまう。
「お相手は俺より一回りくらい下の子で、思いやりがあって優しくて、行列ができるほどの有名な和食屋さんで働いてる。で、元看護師で俺の命救ってくれた。最高でしょ?」
突然電話口で惚気だす澄人さん。笑っているので話が平和に進んでいるのかとおもいきや、
『頑張るのはほどほどにしろ、おまえが倒れたら示しがつかん! あと、そういう相手がいるなら先に言わんかバカものが!』
と怒鳴られている声が聞こえてきた。



