クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。




 澄人さんは私の手の甲に手を重ね、「けれど」と言葉を続けた。


「穂香が付き合えない理由が俺が『財閥御曹司だから』っていう理由なら、俺、社長を辞めてもいいと思ってるし、財閥の輪から抜け出してもいいと思ってる。別に俺が社長じゃなくても成り立つし、逆に好き勝手する俺なんて社長に向いてないと思うし。社長になってからの歴は短かったけど穂香と出会うまでは社長できたしさ。穂香のお店も残すことができたし、もう十分」


 ハハッと清々しく笑う澄人さん。


 澄人さんは、『元々ある会社を継いだことには変わりはないんだけど、傲慢者にはなりたくないって親父達を見て思ってた。俺は今頑張ってくれている従業員を大切にしながら、従業員より頑張れるヤツになりたい』と言った。確かにこの耳で聞いた。


 ……本心は違うはずなのに、絶対社長をしたいはずなのに。私は何を言わせてしまっているのだろう。私は澄人さんに社長を辞めてほしいわけでも、財閥御曹司という枠組みから離れてほしいわけじゃない。


 ……あっ。これ、

 今言わなきゃダメだ。

 今伝えてくれている澄人さんのように、私も自分の気持ちを正直に伝えよう。


「澄人さん、私澄人さんに感動したんです。『今頑張ってくれている従業員を大切にしながら、従業員より頑張れるヤツになりたい』って言っていたの、とても凄いなと思ったんです。わ、私……澄人さんが好きです。でも、この気持ちが恩義の好きか、憧れか、恋愛の好きかと言われると……どれも否定ができなくて……」


 澄人さんは言い途中だった私の言葉を遮り、「やった!」と、拳を握りしめ嬉しさを現した。