「ちょ、ちょっとまってください、住吉さん! 私こんな格好で……それに、何も持ってないですし……」
今着ている服はお洒落な服ではない。パーカーにジーンズといった、なんともいえない格好で女子力の欠片もない服装だ。メイクもファンデーションとアイラインとリップを塗っているくらいだし、こんな容姿で外を出歩きたくない。
「大丈夫、何もいらないから。外も出歩かないし、誰とも会うことはないと思う」
出歩かないし、誰とも会うことはない場所とは、どういうところなのだろう。不安気な私が可笑しかったのか、住吉さんは「大丈夫、変なところには連れ出さないから」とハニかんで私の気持ちを和ませた。
――ううっ、いちいちカッコイイ。
手を引かれ着いた場所は近くの駐車場だった。
真っ白な、いかにも高級車というお上品な車まで連れられ、
「乗ってくれる?」
助手席のドアを開けてくれた。
さっそく言われるがままにお高そうな車に乗り込む。座席までふかふかだ。お姫様にでもなった気分で少しだけ浮かれていると、住吉さんは運転席へ乗り車のエンジンをかけた。
静かに走り出す車。車内にはBGMのような音楽が掛かっていて、無言な空気を少しだけ打ち消してくれている気がした。今からどこへ向かうのだろうとドキドキしていると、住吉さんが「ねぇ、羽賀さん」と私に話しかけた。
「夜までさ、俺の恋人になってくれる?」
住吉さんの言葉におもわずせき込んでしまった。
「こっ……恋人ですか!?」
ビックリしすぎて声が裏返った私に、住吉さんはまたクスクスと肩を揺らして笑った。
「うん、そう、恋人。俺のことは澄人って呼んで。それと今から敬語もなしだよ」



