意識がないときに、そんなことになっていたなんて全然知らなかった。同時に私が呼びかけていたことや、手を握っていたことを知ってくれていて少し嬉しくなる。
「――来週、この時間にまた来ます」
住吉さんはフッと微笑みお店を出た。
本音を言えばお借りしたい。でも、これ以上金銭面で不安になりたくないし、不安にさせたくもない。
その場に座り込むと、父と母は私に近寄り「穂香ありがとう」と涙を流した。
「あんないい人この世にいないわよ。お金関係なく、素敵な人だし付き合ったら?」
「うんうん、父さんもそう思うぞ!」
「それに、とてもカッコイイじゃない。申し分ないわよ!」
申し分なくても、私は住吉さんとはつり合わない。
涙しながら喜ぶ父と母に、
「相手方の両親が受け入れてくれるわけないでしょ。住吉澄人さんは財閥御曹司なんだよ!? 許嫁くらいいるでしょ!」
吐き捨てるように言うと、父と母は罰が悪そうな表情を私に向けた。