つぐむちゃん、口を開けて。



 でも、本来はなんて言えばいいのか全然まとまってくれなくて。

 悔しさでじわ、と涙が滲んだ。



「……ごめ……」

「大丈夫だよ。俺だってつぐむちゃんに内緒にしてることあるからさ」

「ぇっ……」



 ばっと顔を上げる。

 優しい微笑み。の中に、読み取れない怖さがあって。

 いくら見ても内緒の中身がわかることはない。

 わたしも千鶴くんから見たらこうなのかなって思ったら申し訳なかった。



「知りたい?」



 スル……、千鶴くんの手がわたしの腕を滑る。



「……ううん」



 気を遣ってもらわなくても大丈夫。

 秘密は、無理に話すものじゃないから……。


 そういう意味で、首を振ったつもりだった。



「……そっか」



 ただ、手が離れただけ。

 なのにどうしてこんなにも喪失感があるのだろう。



 その日の帰り道は、どうしてか少し気まずくて。

 気持ちはどんより曇るばかりだった。