つぐむちゃん、口を開けて。



 え……お、起きて……っ?



「~~っ!」

「つぐむちゃん、逃げないの」



 ベッドから降りようとしたところを後ろから抱き止められる。

 耳に息を吹き掛けられながら、低音が鼓膜を揺らした。



「いーじゃん、もっかい……ね?」

「ぅ、うぅ……っ」



 恥ずかしさで全身が熱い。

 相手に意識がないときに限って大胆になれる自分が憎いっ……。

 バタバタ足を動かすほど、千鶴くんの力は強くなる。



「次は口がいいなぁ。お願い、つぐむちゃん」



 甘い声に全身が反応してしまう。

 千鶴くんにお願いされて、断れるわけもなく。



「、っ……」



 振り向きざまに、掠める程度のキスをする。

 届きもしない好きを込めて。