つぐむちゃん、口を開けて。




「ちょ、ちょっと待ってもらっていい?」

「うん……」



 両手に持ったみかんに目を落として気を紛らわせる。ガサゴソと片付けをする音が聞こえる。

 わたしはただ、みかんをたくさんもらったから千鶴くんにもお裾分けをしようと持ってきただけなんだけど……。

 きっとお互いそうなのだろう。完全に油断していた。



「ご、ごめんお待たせ……あっ、手も洗ってこないと」

「ちづる、くん……」

「えっ? な、なに? 嫌な気持ちにさせちゃった!? ほんとにごめん、でも、別れるとかは――」

「…………わたしのせい……?」



 じわ、と涙が滲んだ。

 付き合ってそろそろ二年目だ。いっぱい触ってもらったことはあるけど、最後までしたことはない。


 わたしに遠慮して、一人でしちゃったの……?