その頃、富士の山宮では、、、。 「おーーーい、葵殿は何処じゃ?」
「爺よ、そんな大声を出さずとも聞こえておりますわな。」 洗い物をしておった巫女が怪訝そうな顔で爺を見詰めておりまする。
「いやいや、葵殿は何処じゃ?」 「いつもの如くでございますよ。 そろそろ人間たちが登ってくる頃じゃてな。 拝殿にお座りなさっておろう。」
「またまたそんな悠長なことを、、、。」 「そうは申されても、、、ほら御覧なされ。」
婆が拝殿後ろの窓を開けますと葵殿はきちんと正座しておられますのです。 「あやつはあれしか脳が無いでな。 おかわいそうに。」
「何を申すか! 巫女はあれが、、、。」 「また始まったぞよ。 婆の小言は聞きたくないでなあ。」
巫女たちはさっさとお務めをしに戻っていきますが、爺は何となく葵殿が心配なのですぞ。
(仕事じゃとは言うけれど毎日毎日ようあれで務まるのう。) 葵殿は入口の方を見ながら優しく微笑んでおられます。
他の者たちはそんな葵殿を見ながらヒソヒソと話し合っておるようですなあ。 何じゃ?
「しかしよう、願い事を聞かれるのはよろしいが叶えてやる我々のことも考えて下されや。」 「そうじゃそうじゃ。」
「何しろ、ほんの少しの供物で全国を飛び回っておるのですぞ。 考えて下され。」 「そうは言うけれどやなあ、「これだけ寄越せ。 さもなくば叶えんぞ。」なんて言われますまい。」
「それもそうじゃな。 この願い事にはこれだけの供物を、、、なんて聞いたことも無いであるよ。」
山裾の方から人間たちがえっちらおっちら登ってくるのが見えまする。 そろそろじゃなあ。
富士山は旭も昇って辺りが騒がしくなってきたところ。 葵殿がいつも見回している風穴も小鳥たちが賑やかに遊んでいるのが見えまする。
葵殿はと申しますとさっきから拝殿の奥に腰掛けて鈴を鳴らすのを今か今かと待ちわびておりますようです。
午前10時を過ぎた頃、じゃらんじゃらんと鈴を鳴らす音が聞こえてまいりました。 「来たぜよ来たぜよ。」
巫女たちはそれぞれに耳打ちしながら拝殿の様子を伺っております。 葵殿は顔色も変えず表情も変えずに人間たちの願い事を伺っておるようですなあ。
「ほんとにまあ、ようあれだけたくさんの願い事を聞いておられることじゃのう。 わらわたちにはとてもじゃないが出来んわ。」
「しかもまあ今日も供物は少ないんじゃろうて。 困ったもんよのう。」 「僅かの供物でまたまた飛び回らんといかんのか。 勘弁願いたいのう。」
「とは言うけれど葵殿が居なさらなかったら供物も何も有ったもんじゃなかろう。 文句は言わぬほうが、、、。」 「爺はいつもそれじゃ。 わらわたちの苦労を知らんのじゃろう?」
「そんなことは無いのじゃ。 十分に分かっておる。」 「つ、も、り、、、よな。 もし?」
「婆、いつの間に来たんじゃ?」 「さっきからずーーーーーーーーーーーーーっと居りますがな。」
爺と婆は今初めて気付いたような顔をして奥宮へ帰っていかれました。 葵殿は?
まだまだ身じろぎ一つなさらずに願い事を聞かれておりますなあ。 感心 感心。
そのまま夕方になりまして人間たちの声もしなくなりました。 「やっと静かになったみたいじゃのう。」
「そうじゃそうじゃ。」 巫女たちがわさわさと拝殿のほうにやってまいりました。
葵殿はというとさっさと拝殿を出られたようで何処に行かれているのか姿が見えませぬ。 「今日はまたどうしたことじゃ? 供物が多いではないか。」
巫女たちが拝殿の前に集まりますと一人が頓狂な声を挙げました。
「何じゃこれは?」 黒っぽい飲み物?やら奇妙な食べ物とも付かぬ物やら、何やらグニュグニュした変な物まで山のように積まれておりまする。
それを一つ一つ手に取っては皆が揃って妙な顔をします。 それもそのはず。
この時代にコーラとかグミとかいう飲み物や食べ物はまだまだ無いのですからなあ。
「これはいったい何じゃ? 食えるのか?」 「わらわに申されても困りまするぞ。」
「それはそうじゃが、、、。 食わんとわしたちも生きては行けぬ。 どうしたものかのう?」 爺は困った顔をしておりますが、、、。
それでも供物の中に饅頭とか餅とかいう見慣れている食べ物を見付けてホッとしたようでございます。
「後は葵殿がなんとかされるじゃろう。 任せておけばよい。」 なんとまあ、、、。
そんなわけでコーラの缶とかグミなどという訳の分からん物は葵殿の部屋の前にドサッと山積みにしておかれました。
散歩から帰られた葵殿が部屋の前に来るとあららびっくり。 供物が山のように置かれておりまする。
「これはいったい、どうなさったのじゃ?」 「心配することは無いでよ。 今日の供物があまりに多いでな、そなたの部屋の前に置かせてもらったんじゃ。」
「とは言ってもこれは果たして何じゃ?」 「巫女たちにも分かりませぬ。 葵殿なら何とかされるじゃろうと思ってここへ持ってきたまででござりまするよ。」
「そうであるか。」 それから葵殿は供物を一つずつ手に取って確認するのですが、、、。
どれが何やらさっぱり分かりませぬ。 「これは何じゃ?」
そう思いながらコーラの缶を開けてみると、、、。 ジュワーーーーーッと泡塗れの水が噴出してきました。
「ギャーーーーーーーーーーー!」 その声に爺が慌てて飛んできましたが、、、。
「どうなされたのじゃ?」 「こ、こ、これから水が噴き出したのじゃ。」
「おーおー、それは大変ですなあ。 でもまだまだ有りますぞ。」 「そうは言われても、、、。」
「何か食べておかねば明日が大変ですぞ。」 爺はコーラでびしょ濡れになった葵殿を見やりながら帰って行きました。
葵殿はというとそれからも供物と取っ組み合いをしておいで膿瘍で、、、。
缶を蹴り飛ばしては泡塗れになり袋をパンクさせては粉塗れになりながら何とか食べれる物を食べておいでのようですなあ。
こうして今日も山の夜は静かに平穏?に過ぎていくのでありました。
「爺よ、そんな大声を出さずとも聞こえておりますわな。」 洗い物をしておった巫女が怪訝そうな顔で爺を見詰めておりまする。
「いやいや、葵殿は何処じゃ?」 「いつもの如くでございますよ。 そろそろ人間たちが登ってくる頃じゃてな。 拝殿にお座りなさっておろう。」
「またまたそんな悠長なことを、、、。」 「そうは申されても、、、ほら御覧なされ。」
婆が拝殿後ろの窓を開けますと葵殿はきちんと正座しておられますのです。 「あやつはあれしか脳が無いでな。 おかわいそうに。」
「何を申すか! 巫女はあれが、、、。」 「また始まったぞよ。 婆の小言は聞きたくないでなあ。」
巫女たちはさっさとお務めをしに戻っていきますが、爺は何となく葵殿が心配なのですぞ。
(仕事じゃとは言うけれど毎日毎日ようあれで務まるのう。) 葵殿は入口の方を見ながら優しく微笑んでおられます。
他の者たちはそんな葵殿を見ながらヒソヒソと話し合っておるようですなあ。 何じゃ?
「しかしよう、願い事を聞かれるのはよろしいが叶えてやる我々のことも考えて下されや。」 「そうじゃそうじゃ。」
「何しろ、ほんの少しの供物で全国を飛び回っておるのですぞ。 考えて下され。」 「そうは言うけれどやなあ、「これだけ寄越せ。 さもなくば叶えんぞ。」なんて言われますまい。」
「それもそうじゃな。 この願い事にはこれだけの供物を、、、なんて聞いたことも無いであるよ。」
山裾の方から人間たちがえっちらおっちら登ってくるのが見えまする。 そろそろじゃなあ。
富士山は旭も昇って辺りが騒がしくなってきたところ。 葵殿がいつも見回している風穴も小鳥たちが賑やかに遊んでいるのが見えまする。
葵殿はと申しますとさっきから拝殿の奥に腰掛けて鈴を鳴らすのを今か今かと待ちわびておりますようです。
午前10時を過ぎた頃、じゃらんじゃらんと鈴を鳴らす音が聞こえてまいりました。 「来たぜよ来たぜよ。」
巫女たちはそれぞれに耳打ちしながら拝殿の様子を伺っております。 葵殿は顔色も変えず表情も変えずに人間たちの願い事を伺っておるようですなあ。
「ほんとにまあ、ようあれだけたくさんの願い事を聞いておられることじゃのう。 わらわたちにはとてもじゃないが出来んわ。」
「しかもまあ今日も供物は少ないんじゃろうて。 困ったもんよのう。」 「僅かの供物でまたまた飛び回らんといかんのか。 勘弁願いたいのう。」
「とは言うけれど葵殿が居なさらなかったら供物も何も有ったもんじゃなかろう。 文句は言わぬほうが、、、。」 「爺はいつもそれじゃ。 わらわたちの苦労を知らんのじゃろう?」
「そんなことは無いのじゃ。 十分に分かっておる。」 「つ、も、り、、、よな。 もし?」
「婆、いつの間に来たんじゃ?」 「さっきからずーーーーーーーーーーーーーっと居りますがな。」
爺と婆は今初めて気付いたような顔をして奥宮へ帰っていかれました。 葵殿は?
まだまだ身じろぎ一つなさらずに願い事を聞かれておりますなあ。 感心 感心。
そのまま夕方になりまして人間たちの声もしなくなりました。 「やっと静かになったみたいじゃのう。」
「そうじゃそうじゃ。」 巫女たちがわさわさと拝殿のほうにやってまいりました。
葵殿はというとさっさと拝殿を出られたようで何処に行かれているのか姿が見えませぬ。 「今日はまたどうしたことじゃ? 供物が多いではないか。」
巫女たちが拝殿の前に集まりますと一人が頓狂な声を挙げました。
「何じゃこれは?」 黒っぽい飲み物?やら奇妙な食べ物とも付かぬ物やら、何やらグニュグニュした変な物まで山のように積まれておりまする。
それを一つ一つ手に取っては皆が揃って妙な顔をします。 それもそのはず。
この時代にコーラとかグミとかいう飲み物や食べ物はまだまだ無いのですからなあ。
「これはいったい何じゃ? 食えるのか?」 「わらわに申されても困りまするぞ。」
「それはそうじゃが、、、。 食わんとわしたちも生きては行けぬ。 どうしたものかのう?」 爺は困った顔をしておりますが、、、。
それでも供物の中に饅頭とか餅とかいう見慣れている食べ物を見付けてホッとしたようでございます。
「後は葵殿がなんとかされるじゃろう。 任せておけばよい。」 なんとまあ、、、。
そんなわけでコーラの缶とかグミなどという訳の分からん物は葵殿の部屋の前にドサッと山積みにしておかれました。
散歩から帰られた葵殿が部屋の前に来るとあららびっくり。 供物が山のように置かれておりまする。
「これはいったい、どうなさったのじゃ?」 「心配することは無いでよ。 今日の供物があまりに多いでな、そなたの部屋の前に置かせてもらったんじゃ。」
「とは言ってもこれは果たして何じゃ?」 「巫女たちにも分かりませぬ。 葵殿なら何とかされるじゃろうと思ってここへ持ってきたまででござりまするよ。」
「そうであるか。」 それから葵殿は供物を一つずつ手に取って確認するのですが、、、。
どれが何やらさっぱり分かりませぬ。 「これは何じゃ?」
そう思いながらコーラの缶を開けてみると、、、。 ジュワーーーーーッと泡塗れの水が噴出してきました。
「ギャーーーーーーーーーーー!」 その声に爺が慌てて飛んできましたが、、、。
「どうなされたのじゃ?」 「こ、こ、これから水が噴き出したのじゃ。」
「おーおー、それは大変ですなあ。 でもまだまだ有りますぞ。」 「そうは言われても、、、。」
「何か食べておかねば明日が大変ですぞ。」 爺はコーラでびしょ濡れになった葵殿を見やりながら帰って行きました。
葵殿はというとそれからも供物と取っ組み合いをしておいで膿瘍で、、、。
缶を蹴り飛ばしては泡塗れになり袋をパンクさせては粉塗れになりながら何とか食べれる物を食べておいでのようですなあ。
こうして今日も山の夜は静かに平穏?に過ぎていくのでありました。



