私たちの出逢いは、ごくありふれたものだった。

18の頃、音大に合格して上京した私は、近くのコンビニでバイトを始めた。

バイト先で、よく同じシフトになった相手が、大学こそ違うものの、同い年で最寄り駅も同じ、及川千尋という少年。

お互いに地方から出てきた者同士で、女子高出身の私と、男子高出身のちーちゃん…当時は及川くんと呼んでいたが…は、親しくなるまでも時間がかかり、知り合ってから付き合うまで、まず1年かかった。

彼と出会うまでは、片想いすら知らなかったので、初恋の相手から告白され、本当に嬉しくて仕方なかったのは今でも覚えている。

学生のうちは、毎日少しでも時間を作っては会っていたが、お互いに初恋ということもあり、付き合うってどういうことだろう?という疑問を横に置いた状態で、付き合っていながらも、友達以上恋人未満のような関係が続いた。

そんな清らかな関係は、お互いに卒業しても変わらず、交際5年目になってもまだ、キスさえも交わさずに、会える時間だけが減ってしまった。