だけどこの一ヶ月でわかった。この男は、そういった家庭教師たちとは違う。
まず、勉強が嫌で逃げ隠れても、なぜか鷹司はあっという間に私のことを見つけ出す。
どうしてなのか全くわからないのだけど、屋敷のどこに隠れても即刻バレるのだ。
客間のクローゼットの中に隠れていたのが見つかったときは、もはや感心してしまった。
それから、鷹司は私がいくら不出来でも、少しも嫌な顔や馬鹿にした顔をしない。
何度同じところで躓いても、まるで初めて教えるかのように丁寧に解説をしてくれる。そして悔しいことに、そのへんの教師よりずっとわかりやすい。
「英語と現代文は無事に赤点回避。もっと言えば平均を上回ったようでございますね」
「当然の結果ね」
私は中間テストの個票を見せながら、ふふんと笑う。これでも出来た方なのだ。
まあ、それ以外は追試だけど。
鷹司はそれでも「さすがです」と微笑んだ。