「香りというのは難しいのですよ。同じ系統であっても、少し別の香りが混ざるだけで苦手なものになる。その日の気分や体調によっても好みが変わってしまいますし」


「要するに私の好きなの香りがわからなかったってわけね」


「申し訳ありません」




鷹司の答えに、私はふふっと笑い声を漏らす。

持ち前の観察力から私の好みなんてすぐに言い当ててしまうこの執事にも、わからないことがあるのだ。それが面白くて、答えを知っている質問をしてしまう。




「そんなことよりお嬢様。本日から二年生でございますね。無事進級できたようで何よりです」


「進級が危ういほど成績悪くもなかったでしょうが!」




仕返しのように話を変えられてしまった。

うちの学校は、成績はよっぽど壊滅的でない限り、出席日数があれば進級できる仕組み。きちんと授業に参加している私は進級はできて当然なのだ。