(両想いってすごい。幸せ……!)

 侍女のスージーも気を利かせて部屋を出て行ってくれたので、今はライオネルと二人きりだ。

「お前が過去に狙われた場所では玄関と中庭が圧倒的に多い。しばらく初級魔術の授業は座学のみになるから校庭はカウントしなくていいだろう……って、おい、聞いているか?」

「聞いてます」

 ライオネルの胸に顔をうずめてにへらっと笑うエイミーに、ライオネルがこめかみをもんだ。

「聞いているならいいが……、とにかく、玄関と中庭に、魔術師に追跡魔術を張らせておく。こちらはウォルターが指示を出しているから任せておけばいいだろう」

 今回張られる追跡魔術は、その場で魔術が発動された際に、使用者を特定するためのものだ。相手に気づかれず、けれども魔術を行使したものがどこにいるのかを調べるため、学園内、および周辺の地図に反応が出るようにするそうだ。地味な魔術ではあるが非常に高度なため、相手に悟られずにこの魔術を行使するのはエイミーやライオネルでは難しい。

 そしてエイミーに悪質な嫌がらせをしていた犯人の特定ができれば、そこから、他の誰かとつながりがあるのかどうかを調べていく。

 犯人捕縛に移るのは、それらをすべて調べてからになるので、エイミーはしばらく何も知らない囮役として今まで通り生活しておく必要があった。

「いいか、さっき渡したブレスレットは肌身離さずつけておけよ」

 囮のエイミーに危険が及んではいけないので、ライオネルは先ほど防御魔術を組み込んだブレスレットをプレゼントしてくれた。

 万が一エイミーが頭上から降ってくる物体をよけきれなかったとしても、このブレスレットに組み込まれた防御結界が発動してエイミーを守ってくれる。