輝悠先輩が組員さん達と接しているのを見て仲間思いなんだなと感じた。


そんな輝悠先輩が橋田さんのことを心配にならないはずがないよね。


「橋田の話はこれでおしまいにしようか。案外ひょっこり現れるかもしれないし」


「そうですね」


頷きながら、橋田さんの無事を祈った。


ふと輝悠先輩の気配が近づいた気がして、顔を上げる。


思っていたよりも顔が近くてドキドキした。


そのまま顔が近づいていき、何をされるか察した私は目を閉じる。


チュッとリップ音が聞こえると同時に気配が離れていった。


目を開けると、珍しく優しい笑顔を浮かべた輝悠先輩がいた。


何故かその笑顔に不安を覚えた私は抱きしめてほしくて堪らなくなる。


「輝悠先輩」


「何?未珠ちゃん」


「ぎゅっとしてもらってもいいですか?」


「もちろんいいよ」


私のわがままに快く頷いてくれて、ぎゅっと抱きしめられた。


輝悠先輩の匂いがする……


それが今は安心できた。


「珍しいね。未珠ちゃんからぎゅっとしてって言うの」


「そういう気分なんです」


「そっか」


外からは雷が鳴っている音がする。


雷の音が聞こえてくるのに、今は輝悠先輩がそばにいて気にならなかった。


――あんなことになるとも知らないで、この時の私は呑気に笑っていた。