初恋のつづき

「ちょっ、それ、今ここで持ち出します……⁉︎」


それには答えず依然笑顔を崩さない名桐くんを見て、じわじわと頬が熱くなってくる。

これ、絶対面白がってる……!


「……お二人は、仲が良いんですね……?」


そんな私たちのやり取りを見ていた上田さんが、そこで戸惑ったようにポツリとこぼした。


「── ああ、すみません。有賀さんとは、実は高校の同級生だったもので」


言いながら、名桐くんはその笑みを上田さんの方へ向けた。


「あっ、え?そうだったんですか……!」


そしてその笑みを受けた上田さんの視線が、今度は私の方へ……。


「はい、実は……。驚かせてしまってすみません……」

「あ、いやっ、それは全然……!」


ぺこりと頭を下げた私を見て慌ててかぶりを振った上田さんは、何かを思案するように一瞬視線を落として、でも、それからすぐにまた私をまっすぐに捉えた。


「── っじゃあ!もしこの後少しお時間あったら、お二人ともご一緒にお茶でもいかがですか?この近くにおすすめのカフェがあるんです。どれを食べても美味しくて。まだ食事の時間には早いですし、せめて今日のお詫びにぜひご馳走させてください!」


そう言って私たちを誘ってくれたのだけれど。


「お心遣いありがとうございます。ですが、生憎私も有賀もこの後別件が入っておりまして……。またの機会にぜひ」


と、名桐くんが悠然とした笑みのままとてもスマートに、でも有無を言わせない感じでそれをお断りをしたのだった。





「上田さん、しょんぼりしてたね……」


打ち合わせを終え、リーフレットを届けるため目的地まで向かってもらっている車中。


「……ああ」


そんな私の呟きに、一拍間を置いて返事が返って来た。


「真面目な人だから、私たちに迷惑を掛けてしまったって、気にしてるんだろうなぁ」

「……」

「しかも、それを名桐くんがまさかの交渉材料に使っちゃうから……」

「(……多分、気落ちしてた主な原因、そこじゃねーと思うけどな……。)でもま、そのおかげで遠野の思いつき、形になりそうだろ?」


じとりと投げた私の視線を、不敵な笑みが跳ね返してくる。


「……う……。それは、感謝してます」