初恋のつづき

「……ああ!そうだったんですね!それは良かったです。そう言っていただけると僕も嬉しいです。有賀さんは、今回のはもう行かれました?」


その瞬間上田さんの申し訳なさそうだった顔がパッと破顔して、視線が名桐くんから私に移った。


「あ、まだなんですよ!でも、来週末の予約が取れているので、友人たちと3人で伺う予定です」


ルナアーラホテルTOKYOのスイーツビュッフェはとても人気で、特に季節ごとのメニューの切り替わり時は、予約開始後その枠がすぐに埋まってしまうことで有名だ。

甘いもの好きな私とりかちゃんともう1人の同期は、7月から始まるメロン&マンゴーフェアを狙って、開催日の2ヶ月前の予約開始日に手分けして予約争奪戦に参戦したのだけれど、今回はりかちゃんが運良くそのひと枠を勝ち取ってくれたのだった。

毎回チャレンジしているもののなかなか予約が取れなくて、春のいちごフェアの時期にようやく行けた話を以前上田さんにしたことがあったから、覚えていてくれたのだろう。


……何にしても、名桐くんの話題のチョイスが絶妙過ぎた。

ありがとう……、名桐くん。


「今回は予約、取れたんですね!僕たちスタッフの間でも大人気のスイーツビュッフェですから、ぜひたくさん堪能して来てくださいね」


上田さんが満面の笑みでそう言ってくれた後、


「あっ、そうだ、今回のスイーツのメニューなんですけどね、」


と、タブレットでスイーツビュッフェのページを見せてくれ、おすすめを教えてくれる。


「わぁー、どれも美味しそうですねぇ」


机を挟んで向かい合っている状態から、お互いに自然と少しだけ頭を寄せてタブレットを覗き込む形になる。

それらを眺めながら、ふと隣の彼に聞いてみた。


「名桐く……、名桐さんは、スイーツはお好きですか?」


つい名桐くん、と呼びそうになってしまって焦ったけれど、何とか持ち直す。

名桐くんとは高校のクラスメイトだったけれど、そう言えば、そんな些細なことすら知らなかったなぁと、今更ながら思ったから。


「有賀さんほどではないですが、好きですよ?」

「え、意外です!」


ところが綺麗な笑みと共に返って来たその答えが意外で、つい間髪入れずにそう突っ込んでしまえば、ふわっと弧を描いた(まなこ)とは真逆に、きゅ、と悪戯に持ち上がった口角。


「── そうですか?好きなおやつが酢昆布とか茎わかめとか干し梅とかの有賀さんに比べたら、意外性は少ないと思いますが」


……思わぬ反撃を受けることになってしまった。