初恋のつづき

というのも、何度かお仕事をご一緒する内に、上田さんはタブレットでだけでなく、私と同じでアナログなスケジュール帳も持ち歩いていて、その両方でしっかり予定やタスクを管理する人だということを知ったから。

打ち合わせ後に、お互いの使いやすいお勧めのスケジュール帳の話で盛り上がってしまったことがあるくらいだ。

だから、そんな風に徹底して管理している人がダブルブッキングをするなんて、と驚いてしまったのだ。

余程お疲れだったのだろうか。


「いやぁ、はは……、実は……」



聞けば上田さんの後輩が、彼の不在時に私たちの前に打ち合わせの予定が入っていた企業の担当者から時間変更の連絡を受け、その旨ポストイットに書いてパソコンに貼っていたらしいのだけど。

それが上田さんの見る前に剥がれ落ちてしまい、しかもその落ちた先がどうやら運悪くゴミ箱だったようで……。

それが、すっかりなかったことになってしまった。

そして時間が変更されたことを知らないまま、上田さんは我々との打ち合わせの予定を組んでしまい、結果、ダブルブッキング。

幸いギリギリのところでそれが発覚し、私へ連絡が来たという訳だった。


……それはそれは、なんて恐ろしい……。

うちでも、いつ起こってもおかしくない事例だ。

これはポストイットをテープでさらにペタッとして、伝わったかどうか、口頭でもちゃんと確認した方が良いな。

うん、徹底しよう。


「それは大変でしたね……。でも、事なきを得たようで、良かったです」

「いや、有賀さんと名桐さんのお陰ですよ……!ありがとうございました!でもこちらの不手際でお二人にはご迷惑をお掛けしてしまって、本当に申し訳なかったです……」

「あっ、いやっ、それは全然……!」


ああ……!

申し訳なくなって欲しかった訳じゃなかったのに……。

これは、蒸し返さなくて良い話題だった。

思ったことが口からポロッと出る癖、本当良くないよ、私……。


何か別の話題を、と内心慌てていれば、隣の名桐くんが徐に口を開いた。


「── そう言えば、私の同僚が先日こちらのスイーツビュッフェに伺ったようで。特にメロンのロールケーキと、メロンのタルトがとても美味しかったと言っていました」