「だだだ、大丈夫です!あのっ、今日は本当にいろいろありがとうございました!名桐くんも気をつけて帰ってね!それじゃ、また仕事でよろしくお願いします!おやすみなさい!」
とにかくこれ以上近づかれてしまうと、無理矢理押し込めていたさっき抱き止められた時の名桐くんの香りだとか、腕の力強さだとか、それらが漏れなく甦ってきて余計に顔が熱くなってしまうから。
だから私はこの状況を一刻も早く切り上げるべく、指の隙間から目だけを覗かせて改めてお礼を告げ、強制終了させようと試みる。
本当はちゃんと顔を晒して言いたかったけれど、顔の熱が引かない今は、ちょっと無理そうだ。
だから申し訳ないとは思いつつもそのまま勢い良く頭を下げてくるりと踵を返し、名桐くんから顔が見えなくなったところでようやくその手を外した、のだけど。
「あ、ちょっと待て、」と名桐くんに無防備になった腕をくん、と引かれ思わず振り返ってしまったのと、「あれ、千笑ちゃん?」と彼の背後から名前を呼ばれたのはほぼ同時だった。
掴まれた腕は、案外すぐに離された。
「あ、あれ、亮ちゃん。今帰り?」
「うん。今日は午後出勤だったからね。って、言ったでしょ?」
「そ、そうだったね……、お疲れ様……」
彼の後ろから姿を現したのは、昼間にも会ったばかりの亮ちゃんで。
私がははは、と乾いた笑いを漏らせば、亮ちゃんもクスクスと笑いながら私の方へ歩み寄ってくる。
「……ん?千笑ちゃん顔赤い?珍しいね、飲んでもいつも顔には出ないのに。……ああ、なるほど……?……ふふ、まぁ食事、楽しかったようで何よりだねぇ」
「う、うん。あのね亮ちゃん、こちら、」
「遠……、有賀さんを遅くまで付き合わせてしまって申し訳ありません。……申し遅れました、TYMの、名桐と申します」
何かに一人納得した様子の亮ちゃんに私が紹介するよりも早く、名桐くんが一歩前へ出て名刺を差し出し、亮ちゃんもそれに慣れた手つきで応じた。
「ああ、これはご丁寧に……。イヴェール・デザインの、有賀と申します。義姉のこと、わざわざ送って頂いてすみませんでした」
「いえ、とんでもない……、………え………?あ、ね………?」
とにかくこれ以上近づかれてしまうと、無理矢理押し込めていたさっき抱き止められた時の名桐くんの香りだとか、腕の力強さだとか、それらが漏れなく甦ってきて余計に顔が熱くなってしまうから。
だから私はこの状況を一刻も早く切り上げるべく、指の隙間から目だけを覗かせて改めてお礼を告げ、強制終了させようと試みる。
本当はちゃんと顔を晒して言いたかったけれど、顔の熱が引かない今は、ちょっと無理そうだ。
だから申し訳ないとは思いつつもそのまま勢い良く頭を下げてくるりと踵を返し、名桐くんから顔が見えなくなったところでようやくその手を外した、のだけど。
「あ、ちょっと待て、」と名桐くんに無防備になった腕をくん、と引かれ思わず振り返ってしまったのと、「あれ、千笑ちゃん?」と彼の背後から名前を呼ばれたのはほぼ同時だった。
掴まれた腕は、案外すぐに離された。
「あ、あれ、亮ちゃん。今帰り?」
「うん。今日は午後出勤だったからね。って、言ったでしょ?」
「そ、そうだったね……、お疲れ様……」
彼の後ろから姿を現したのは、昼間にも会ったばかりの亮ちゃんで。
私がははは、と乾いた笑いを漏らせば、亮ちゃんもクスクスと笑いながら私の方へ歩み寄ってくる。
「……ん?千笑ちゃん顔赤い?珍しいね、飲んでもいつも顔には出ないのに。……ああ、なるほど……?……ふふ、まぁ食事、楽しかったようで何よりだねぇ」
「う、うん。あのね亮ちゃん、こちら、」
「遠……、有賀さんを遅くまで付き合わせてしまって申し訳ありません。……申し遅れました、TYMの、名桐と申します」
何かに一人納得した様子の亮ちゃんに私が紹介するよりも早く、名桐くんが一歩前へ出て名刺を差し出し、亮ちゃんもそれに慣れた手つきで応じた。
「ああ、これはご丁寧に……。イヴェール・デザインの、有賀と申します。義姉のこと、わざわざ送って頂いてすみませんでした」
「いえ、とんでもない……、………え………?あ、ね………?」



