【遠野、次のミーティングがある日の夜、空いてる?もし空いてたら飯行こう】


そう名桐くんから誘われたのは、彼と繋がったその日のうちだった。


私が送った、りかちゃん曰く〝まるで業務連絡〟みたいな挨拶文に、


【固い。やり直し】


と、あのあとなぜか彼からもまさかのダメ出しが来て。

うーん、と考えた末に、


【よろしくね٩(ˊᗜˋ*)و】


と敬語をやめて無駄に元気な顔文字を貼り付け送り直してみたところ、彼からは、昔のオレンジ頭の名桐くんを連想させるような目つきの悪い茶トラ猫がはなまるを持っているスタンプが返って来たのだけど。

そのあと、続けてそんな風にサラリとご飯に誘われたのだ。

あれは社交辞令じゃなかったんだなぁ、と思いながらスケジュール帳を確認し、【空いてます。了解しました】と返せばこれにも漏れなく、【だから固いって】とツッコミをいただいてしまったので、それには二足歩行のゆるい黒猫がピシッと敬礼しているスタンプを返しておいた。


ーーそしてそんなやり取りから一週間後の木曜日。

今日がそのミーティングの日でご飯の日だ。


多分もうそろそろ梅雨明けだよなぁ、という晴天続きの中、何となくいつもよりも丁寧に施したメイクとお気に入りのオフィスカジュアルに身を包み、朝イチのミーティングのためいつもより早めに出社した私は、エントランスのセキュリティーゲートを通過したところでブーブーとその存在を主張し出したスマホをバッグから取り出した。

画面を確認すれば、それは有賀 亮太(あるが りょうた)、母の再婚によって出来た、私の三つ下の義理の弟からの着信だった。