『やめるんだ、環!』
焦り声が聞こえてきた。
それでも俺は、甘い血液を堪能するのをやめられない。
伸びてきた腕。
力ずくで彼女から引き離されても、俺は立ち上がりまた襲い掛かって。
彼女の肩を両手で掴み、彼女の首にかぶりついたとたん、真っ赤に染まっていた俺の視界が一気にクリアになった。
血の味が違う。
俺が求めていたのは、この味じゃない。
これは……
暴れ出していた俺の心臓が、だんだん落ち着いていく。
白髪の男性に抱きしめられ
『環、ごめんな。全部じいちゃんのせいだ。本当にごめん』
泣いているおじいちゃんの手から、血がしたたり落ちていて
俺は、おじいちゃんの手を噛んだことに気がついた。
地面には、大好きな子が倒れている。
首筋には、俺が突き刺した歯の穴が開いている。
血もにじんでいる。



