脳をとろけさせるような匂いが、鼻に入り込んできた。
力が抜けたゾンビのように地面を這いながら、極甘な香りの放出元を探す。
――美織ちゃんからだ。
地面に倒れこんでいる美織ちゃんから放たれている、甘ったるい香り。
こんなことは初めてだ。
美織ちゃんが、美味しそうなデザートに見えてしまうなんて。
俺の中を駆け巡る血液が、血管を破裂させそうな勢いで暴れはじめた。
――今すぐ、首にかぶりつきたい。
――今すぐ、血の味を確かめたい。
果てしなく湧き出る欲望に、抗う余裕すら俺にはない。
俺は立て膝で、美織ちゃんの上半身を抱きかかえる。
寒さで冷えた冬の風が吹き、血で染まった美織ちゃんの髪が俺の舌に触れた。
高級フルーツの果汁よりも、はるかに甘い血。



