放課後になって、私は今日も真っ先に図書館へと向かう。

教室から図書館まで、最短でも徒歩10分はかかる。

もう少し距離が近かったら、図書館で本を読める時間が増えるのに……。

セレブ学校だから設備は十分に整っているのだけど、校内が広すぎるのは考えものだ。

教室がある北館を出たあと、裏庭の噴水広場を通って、目的地へ向かっていると――ふいに、甘い香りが鼻をかすめた。


なんだろう、この(にお)い……。


気になって、匂いのするほうへ足を運ぶ。






しばらくすると、アーチを描いた生垣(いけがき)が見えた。

そこには、真っ赤な色に染まった花が咲いている。

これは――バラだ。

でも、私が辿(たど)ってきた香りは、このバラからではなく、奥の方からしてくる。

匂いに誘われて、私は生垣のトンネルをくぐった。

出口に近づくたびに強くなる甘い香り。

()()れ日が()しこむ薄暗いトンネルを抜けた――そのとき。


赤、ピンク、白、オレンジ、緑、青、紫――色とりどりのバラが目の前に広がった。