野獣様は運命のお姫様と番いたい。



……って、ちょっと待って。

それって、つまり……これから読書の時間を奪われるってこと!?


冗談じゃないわっ!

読書ができないなら、この学校に来た意味がないじゃない。

なんとしてでも、この人たちから逃げないと――。


全校集会が行われる講堂へ移動していると、『化粧室』の看板が目に入った。


そういえば――。


『――仁愛の両親がβ(ベータ)だから、仁愛は完璧にβ(ベータ)に擬態できたんだ。お前の素顔がわからなかったら、Ω(オメガ)だって気づかなかった』


――野獣様が言うことが本当だったとしたら、地味子に戻ればβ(ベータ)に擬態できる。

そうすれば、Ω(オメガ)のフェロモンを隠せて、野獣様から逃げられるかも……。


「あ、あの……――」


私がうしろから声をかけると、4人は立ち止まって振り返る。