なにはともあれ、憧れの学園に入学して早1週間。

放課後は、下校時刻ギリギリまで図書館で読書をするのが日課になっている。

本当は、早朝や昼休みにも行きたいけど……。

教室から距離が遠すぎて、移動するだけで時間がかかるから、放課後しか利用できないんだよね……。

それが、唯一の残念なところだ。


それにしても、さすがはお金持ちのボンボン学校。

今まで読んだことのない珍しい本がたくさん(そろ)っている。


その中でも、特に私が関心を持っている文献が、“第二の性”だ。


最近の研究では、人間には“男女の性別”のほかに、“第二の性”と呼ばれる“3つの性”――α(アルファ)β(ベータ)Ω(オメガ)が存在することが判明した。


α(アルファ)は、全体の人口では、数百万にひとりという割合で存在する、神に選ばれた性。

生まれつき、容姿端麗(ようしたんれい)で、知性や運動などあらゆる能力に(ひい)でた遺伝子を持っている。

そのため、社会的地位や職業的地位が高い。


β(ベータ)は、庶民を含むほとんどの人口が属している、最も一般的な性。

よりよい遺伝子を残すために、β(ベータ)α(アルファ)を本能的に求める習性がある。


Ω(オメガ)は、α(アルファ)よりも人口数は極めて少ない、“絶滅危惧種”と言われている性。

繁殖に特化していて、確実にα(アルファ)を産むことができる。

男性のΩ(オメガ)も存在するけれど、生物学的に子どもを産めるのは女性だけ。