「――バラ園でぶっ倒れてたお前を、俺がわざわざお前の家まで運んでやったんだ。少しは感謝してくれてもいいだろ?」
「はあ?」
大牙の言葉に目が覚めて、思わず声がもれた。
俺がバラ園でぶっ倒れてた?
「豹、覚えてないのか? お前、仁愛ちゃんにK.O食らわされて気絶してただろ? 仁愛ちゃんが言うには、豹に襲われそうだったから自己防衛でやったみたいけど」
「……っ!!」
“あれ”は、夢じゃなかったのか。
じゃあ、あのド庶民は――。
「仁愛ちゃんって、確か……庶民のβで特待生になったって、私たちの間で話題になってた子だよね?」
「ああーっ! 俺たちと同じクラスにいるって言ってた子が仁愛ちゃんだったのか」
瑚依の発言に、大牙は合点がいったらしい。
大牙のヤツ、さっきから馴れ馴れしくド庶民の名前を口にしてんじゃねぇよ。
ムカつく……。
「でも、不思議じゃない? この学園にいること自体もそうだけど、豹のことを拒むβがいるなんて」
俺も美琴と同じようなことを考えていた。
さっきまでは……。



